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2024-04-29

「医療用麻薬」について正しく知る①

NICEではこれから多くのがん患者様をお受入れしていきます。しかしご家族ががんに対する正しい知識や情報を知らない方が沢山いらっしゃいます。がんに対する治療や経過疼痛緩和の方法や副作用など。

今回は疼痛緩和の医療用麻薬に関して記載していきます。
医療用麻薬はがんの方だけではなく、難病の方にも使用することがあります。特にALSなどの難病は痛みを伴うことでも知られています。家族が少しでも疼痛緩和に関して不明点がクリアになることで利用者のQOLの向上にもつながります。

がんが進行すると、できた部位によっては脊髄圧迫や神経障害など、苦痛を伴うさまざまな症状が出てきます。
苦痛の程度には個人差がありますが、そのほとんどは一時的なものではなく、長期にわたって続きます。そのため、患者さんは大変体力を消耗してしまい、日常生活への影響や、治療自体が困難になるケースなどもあります。


また苦痛があると、何ごとにも意欲がわかなくなったり、食欲がない・眠れない・イライラしたりするなど、体力面だけでなく精神面でも消耗してしまうことも少なくありません。


そのため、「緩和ケア」によって適切に苦痛をコントロールしやわらげることが非常に重要です。
緩和ケアというと、「終末期に行う治療」といった印象を持たれている方も少なくありませんが、終末期に限らず適切な段階で取り入れることで、患者さんのQOL(生活の質)向上につながる、がん治療に欠かせない治療の一つです。


がんによる痛みの緩和治療にはさまざまな方法がありますが、そのなかで「医療用麻薬」は薬の投与によって痛みを抑える方法です。
世界保健機関(WHO)は1986年に「三段階除痛ラダー」という、がんの痛みをやわらげるための鎮痛薬の使い方を発表しました。現在、がんによる痛みの緩和治療で一般的に用いられています。


第一段階:軽度の痛みに対し非オピオイド鎮痛薬(NSAIDsやアセトアミノフェン)を開始する。
第二段階:軽度から中等度の痛みに対し、弱オピオイド(コデインやトラマドール)を追加する。
第三段階:中等度から高度の痛みに対し、弱オピオイドから強オピオイド(モルヒネ・フェンタニル・オキシコドン・タペンタドール)に切り替える。この4種類のオピオイドで管理が困難な症例にメサドンを考慮する。


第一段階の薬剤は作用機序が異なるので基本的に継続します。放射線治療や神経ブロックなどにより痛みが減弱した場合には、鎮痛薬の減量が可能となります。オピオイドの適応は、痛みの強さと原因で決定されるべきであり、生命予後の長短を考慮する必要はありません。


三段階除痛ラダーの第一段階はまだ痛みが弱いため、家庭でもよく使われるアスピリンなどの鎮痛薬(NSAIDs:非ステロイド性抗炎症薬)で痛みをコントロールします。それでも痛みがとれない場合は、第二段階として一般にはトラマドールという鎮痛薬を使います。さらにそれでもとれない強い痛みの場合は、第三段階としてモルヒネなどが使われます。


第二段階、第三段階で使われる鎮痛薬は、鎮痛作用などに関与する「オピオイド受容体」というところに結びついて効果を発揮することから「オピオイド鎮痛薬」(弱オピオイド、強オピオイド)と呼ばれています。


これらが「医療用麻薬」です。われわれが単に「麻薬」と呼んでいるものとは異なり、法律で医療用に使うことが許可されている麻薬です。これらは適正に使用すれば依存性もなく、がんによる痛みの緩和効果が期待でき、患者様のQOL向上に必要な薬剤のひとつです。


オピオイドの三大副作用は、便秘、悪心嘔吐、眠気です。便秘は発生率が非常に高く、ほとんど耐性を生じない為、緩下剤の予防的投与が必要となります。


難渋する場合は、作用機序の異なる緩下剤で調整します。悪心嘔吐は、症状が出現すると痛みより辛いと表現する患者が多いとされます。通常1~2週間程度で耐性を生じ改善します。


制吐剤を予防的に投与し、1~2週間経過した時点で減量ないし中止します。眠気に関しては個人差があるが投与量と相関するといわれています。心地よい眠気であれば、数日以内に自然に軽減ないし消失するため、経過観察をします。
3~5日ほどで耐性ができるとされていますが、強い眠気の場合は、1回の投与量を20~30%減量します。調整が困難な場合はオピオイドをスイッチします。副作用をよく理解し、対策を講じることが上手にオピオイドを導入し継続するコツです。