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パーキンソン病と症状緩和ケア
がん・難病患者の中でも多い疾患がパーキンソン病になります。NICEでも積極的にパーキンソン病の方々をお受入れしていきます。
パーキンソン病は、ドパミン神経細胞が変性する進行性の病気です。ドパミンは身体の運動において重要な役割を果たしています。
それなので、ドパミンの低減により、安静時振戦、筋固縮、無動・寡動、姿勢反射障害などの運動症状が出現します。しかし単に運動症状だけではなく、精神症状などの運動以外の症状も出ます。
発症年齢は50~60代に多いですが、高齢になるほど発病率は増加します。一方で、40歳以下で発症するものもあり、若年性パーキンソン病と呼ばれます。
緩和ケアといえば、皆さんがご存知のように、がんのイメージです。
パーキンソン病は、生命予後自体はそれほど悪くないとされ、一般より2~3年ほど短くなるのみとされていますので、その点では同じ神経難病であるALSとは異なっています。
しかし経過には個人差があり、介助が必要になることもあり、先に起こりうる問題を、患者さんやご家族と事前から十分相談し、価値観に沿った生活を送れるように支援する、という点が重要になります。
パーキンソン病も専門性が非常に高い神経内科の病気なので、神経内科医が意思決定にも十分関与して支援してくれるでしょう。
ただ緩和ケアも、生活の質を上げるアプローチで、また早期から対応するものであり、今後起こりうることに対して十分話し合い、前もってその際の道すじを策定しておくことも範疇に含まれます。
緩和ケアはその名前がゆえに症状緩和が中心の医療と捉えられがちですが、実際はそうではなく、症状緩和はあくまで緩和ケア全体の一部です。
在宅医として緩和ケアに従事している際等に、進行したパーキンソン病の患者さんを診療して參りましたが、これから紹介するような多様な苦痛を自覚する疾患であり、それぞれ対処が必要です。
パーキンソン病の身体的苦痛症状
パーキンソン病も様々な苦痛症状を来します。
ただし基本的な神経症状(安静時振戦、筋固縮、無動・寡動、姿勢反射障害等)とそれ以外の苦痛症状があります。
パーキンソン病の精神的苦痛症状
パーキンソン病は多様な精神症状を起こす疾患でもあります。妄想、幻覚、認知機能障害なども認められます。パーキンソン病の患者さんも、抑うつやうつ病になりやすい可能性があることが知られています。抗うつ薬にはパーキンソン病の治療薬と相互作用を起こすものもあるため、使用には注意が要ります。またレビー小体型認知症などパーキンソン病に似ている疾患もあり、それらにも留意する必要があるでしょう。
パーキンソン病では主にドパミンという脳内の神経伝達物質が不足してしまうことで症状があらわれます。この不足してしまったドパミンを正常な状態へと近づけていくためには
●ドパミンを補充する
●ドパミンが分解されにくくする
●ドパミンと同じ働きをもつ物質を取り入れる
など、さまざまなアプローチ方法があります。そしてそれぞれのアプローチ(作用機序)から症状を改善させるパーキンソン病治療薬が数多く登場しています。
主なパーキンソン病治療薬
- ドパミン補充薬
- ドパ炭酸酵素阻害薬
- COMT阻害薬
- MAO-B阻害薬
- ドパミン放出促進薬
- ドパミン受容体作動薬
- アデノシンA2A受容体阻害薬
- 抗コリン薬
- ノルアドレナリン作用増強薬
パーキンソン病治療における「薬物治療の限界」
こうしたさまざまな作用機序の薬剤をうまく用いていくことで、パーキンソン病の症状は長期間コントロールしていくことができます。さらに近年では飲み薬(内服薬)以外にも、貼り薬(貼付薬)や、腸に直接持続的に投与する薬剤(経腸用液)なども開発されています。こうした異なる投与方法によって、さらにはやく、確実に症状を改善することも可能になってきています。
しかし、なかには薬物治療を行っても症状をコントロールできない患者さんもいらっしゃいます。そうした患者さんには薬物治療以外の治療選択肢を検討していく必要があります。
薬物治療以外の治療として一般的であるのが「外科的治療」、つまり手術療法です。パーキンソン病の外科的療法では、脳の深部に電極を挿入する「脳深部刺激療法」が知られています。脳深部刺激療法では患者さんの脳に電極を留置し、そこから電気刺激を与えることで、脳深部で過剰に活動している神経核の働きを抑制することで、パーキンソン病症状を改善させていきます。近年、さらに技術が優れる電極も開発されてきており、今後よりパーキンソン病患者さんの救いの一手となりうる治療方法だと期待されています。