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多系統萎縮症について知る①
多系統萎縮症とは
今回は神経難病の中でもよく耳にする多系統萎縮症について書いていきます。今後がん難病施設を運営するNICEでも積極的に多系統萎縮症の利用者様をお受入れしていきます。
多系統萎縮症とは、神経系の複数の系統(小脳、大脳基底核、自律神経など)がおかされる疾患で、3つのタイプがあります。
小脳や脳幹が萎縮し、歩行時にふらついたり呂律がまわらなくなる小脳失調型、大脳基底核が主に障害され、パーキンソン病と同じような動作緩慢、歩行障害を呈する大脳基底核型、もうひとつは自律神経が主に障害され起立性低血圧や発汗障害、性機能障害などがみられる自律神経型です。
多系統萎縮症のなかには、うつ病を併発してしまう方も一定数いらっしゃいます。また、多系統萎縮症の患者さんの中には前頭葉機能障害を中心とした認知機能障害が現れる方もいます。やる気がなくなる、性格が変わる、物事を計画的に遂行できなくなるといった障害が現れます。
以前は、これらのタイプは別の疾患と考えられていましたが、どのタイプも脳の細胞の中にαシヌクレインという物質がたまりGCIとよばれる構造物が出現することが判明し、同じ病気の症状の出方にすぎないことが分かってきて、現在では多系統萎縮症と総称され脊髄小脳変性症という疾患群の一つに分類されています。
遺伝性はなく、原因については現在研究が進められているところです。中高年に発症することが多く、パーキンソン病よりは頻度が少ないですが進行は比較的早いとされています。症状が進んでくると3つのどのタイプも他のタイプの症状を合併するようになり、文字通り多系統の障害に至ります。
多系統萎縮症の好発年齢は約50歳から60歳程度です。同じ神経変性疾患である、パーキンソン病やアルツハイマー病は年齢が上昇するほどに発症率が高くなります。しかし、多系統萎縮症は、年齢が高ければ高いほど発症するという疾患ではありません。また、発症率の男女差はなく、男女どちらとも発症する可能性があります。
多系統萎縮症の診断
診断は病歴や神経症状の診察が重要ですが、小脳失調型や大脳基底核型はMRIで特徴的な異常がみられるため必ず行います。小脳失調型では小脳や脳幹の萎縮がみられ、脳幹に十字型の模様が現れたり、脳幹と小脳を結ぶ部位にも異常がみられます(図1、2)。
大脳基底核型では、初期には脳幹や小脳の異常はみられませんが、大脳基底核とくに被殻とよばれる部位に特徴的な異常がみられます(図3)。大脳基底核型は初期にはパーキンソン病との区別がしばしば難しいですが、パーキンソン病で心臓の交感神経の働きが低下しMIBG心筋シンチという検査で異常が出るのに対して、多系統萎縮症では異常がでないことが知られています。
多系統萎縮症の治療
この病気は進行性の疾患ですが、現在のところ、根本的に病気を治す、あるいは進行を遅くする治療はありません。大脳基底核型ではパーキンソン病と似たような症状がでるため、パーキンソン病で用いられる薬剤がある程度有効な場合があります。
利用者におすすめしているのは、定期的にきちんと病状を評価し、歩行訓練などのリハビリをしっかり行うことです。多系統萎縮症に限りませんが、神経疾患の多くはリハビリを継続することで、症状の悪化を遅らせることができます。またこの疾患では、喉仏にある声帯を動かす筋肉が麻痺してくることが多く、麻痺が悪化してくると窒息しますので、患者さんの同意のもと気管切開を行うこともあります。また嚥下が困難になった場合は胃瘻を造設し栄養状態の改善をはかる場合もあります。