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2024-06-12

大腸がんについて知る① 緩和ケア専門施設(ホスピス)

福岡市でがん難病専門緩和ケア施設の住宅型有料老人ホーム ひいの邱 と サービス付高齢者向け住宅 ながおの郷 を運営しております株式会社NICEとグループホーム ひいの郷 を運営しております有限会社エス・エイチ・シーです。

今回は大腸がんについて書いていきます。今後がん難病施設を運営するNICEでも積極的に大腸癌の利用者様をお受入れしていきます。

大腸がんの発生のしくみと症状

大腸がんは粘膜(腸管の最も内側にあり、消化物と接触する部分)から発生し、その発生の仕方には、2つあると考えられています。1つは、粘膜にできたポリープ(良性の腫瘍)が、がんに変化する場合、もう1つは、粘膜から直接がんが発生する場合です。

大腸がんが進行するにつれて、腸管が塞がったり、粘膜にあるがんの表面から出血したりして、症状が現れるようになります。


大腸がんには特徴的な症状がない

大腸のどこにがんができるかにもよりますが、大腸がんが進行するにつれて、多くの場合、次のような症状が現れます。

排便の変化

  • 血便(血液が混じった便)が出る
  • 下血(げけつ:肛門からの出血)が起きる
  • 便が細くなる
  • 下痢と便秘を繰り返す
  • 便が残っている感じがする

お腹の変化

  • お腹が張っていると感じる
  • 腹痛が起きる
  • お腹にしこりがある

その他の変化

  • 貧血が起きる
  • 嘔吐(おうと)する
  • 急に体重が落ちている

しかし、これらの症状は大腸がん以外の大腸の病気でも現れるため、症状だけで大腸がんを見分けることは困難です。特に大腸がんの症状として多い血便は、痔だと思い込んでしまうことがあるため注意が必要です。

早く見つければ治癒できる確率が高い

大腸がんは、見つけるのが早ければ早いほど、完全に治る(治癒する)確率が高くなります。特に早期のがんでは、90%以上の確率で治癒するとされています。

自覚症状がない早期の大腸がんの発見には大腸がん検診が有効です。大腸がんになる人が増え始める40歳を過ぎたら、大腸がん検診を年に1度受けることを厚生労働省は勧めています。

また、大腸がんに限らず、重大な病気のサインを見逃さないためにも、自分の便の状態や排便回数を日ごろから把握しておきましょう。前述した症状が繰り返し起きたり、ずっと続いたりするなど、お腹の調子に違和感を覚えたら、自己判断せず、消化器科や胃腸科、肛門科などで、できるだけ早く診てもらうことが大切です

大腸がん(結腸がん・直腸がん) 検査

1.直腸指診

医師が指を肛門から直腸内に挿し込み、直腸内のしこりや異常の有無を指の感触で調べる検査です。

2.注腸造影検査

バリウムと空気を肛門から注入し、X線写真を撮る検査です。この検査でがんの正確な位置や大きさ、形、腸の狭さの程度などが分かります。

注腸造影検査の前には、正確で安全な検査を行うために腸管内をきれいにする必要があります。そのため検査前日から検査食や下剤を服用し、当日に多量(通常約2L)の下剤(腸管洗浄液)を飲みます。

3.大腸内視鏡検査

内視鏡を肛門から挿入して、直腸から盲腸までの大腸全体を詳しく調べる検査です(図3)。ポリープなどの病変が見つかった場合は、病変全体あるいは一部の組織を採取して(生検せいけん)、病理診断が行われます。病変部の表面の構造をより精密に検査するために、粘膜の表面の模様や血管の輪郭、色を強調する画像強調観察や拡大観察が行われることもあります。

大腸内視鏡検査の前には、注腸造影検査と同じように、腸管内をきれいにします。

4.CT検査・MRI検査

CT検査はX線を、MRI検査は磁気を使用して、体の内部を描き出す検査です(図4)。治療前に、周りの臓器へのがんの広がりや転移がないかなどを調べることができます。

図4 CT検査の様子

5.PET検査

PET検査は、放射性ブドウ糖液を注射し、細胞への取り込みの分布を撮影することで全身のがん細胞を検出する検査です。ほかの検査で転移・再発の診断が確定できない場合に行われることがあります。

6.腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカー検査は、がんの診断の補助や、診断後の経過や治療の効果をみることを目的に行われます。腫瘍マーカーとは、がんの種類によって特徴的に作られるタンパク質などの物質で、がん細胞やがん細胞に反応した細胞によって作られます。しかし、腫瘍マーカーの値の変化だけでは、がんの有無やがんが進行しているかどうかは確定できません。また、がんがあっても腫瘍マーカーの値が高くならないこともあります。

大腸がんでは、手術後の再発や薬物療法の効果判定の補助のために、血液中のCEA、CA19-9を測定します。がんの有無やがんがある場所は、腫瘍マーカーの値だけでは確定できないため、画像検査など、その他の検査の結果も合わせて、医師が総合的に判断します。


病期と治療の選択

治療は、がんの進行の程度を示すステージ(病期)やがんの性質、体の状態などに基づいて検討します。大腸がんの治療を選択する際には、次のことを調べます。

1)深達度

大腸がんは、粘膜に発生し、大腸の壁の中を徐々に深く進みます。がんが大腸の壁のどの深さまで広がっているかを示す言葉が深達度です。深達度は、アルファベットの大文字「T」に数字とアルファベットの小文字をつけて表示します。Tis〜T4bに分類され、数字が大きくなるほど、大腸がんが深く広がっています(図5)。

がんの深さが粘膜下層までにとどまるものを「早期がん」、粘膜下層より深いものを「進行がん」といいます。

2)ステージ(病期)

がんの進行の程度は、「ステージ(病期)」として分類します。ステージは、ローマ数字を使って表記することが一般的で、Ⅰ期(ステージ1)・Ⅱ期(ステージ2)・Ⅲ期(ステージ3)・Ⅳ期(ステージ4)と進むにつれて、より進行したがんであることを示しています。なお、大腸がんではステージのことを進行度ということもあります。

大腸がんのステージは0期〜Ⅳ期まであり、深達度、リンパ節転移・遠隔転移の有無によって決まります(表1)。

3)治療の選択

治療は、標準治療を基本として、本人の希望や生活環境、年齢を含めた体の状態などを総合的に検討し、担当医と話し合って決めていきます。

図6は0期~Ⅲ期の、図7はⅣ期の大腸がんの標準治療を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。

0期〜Ⅲ期では、主にがんを切除できるかどうかを判断し、切除できる場合には内視鏡治療または手術が勧められます。また、Ⅲ期もしくは再発リスクが高いⅡ期の場合は、手術のあとに薬物療法を行うことが勧められます(図6)。

Ⅳ期では、他の臓器に転移したがん(遠隔転移巣)が切除できるかどうかを判断します。遠隔転移巣、原発巣ともに切除可能な場合は、手術が勧められます。遠隔転移巣が切除可能であっても原発巣の切除ができない場合は、原則として、薬物療法、放射線治療などの手術以外の治療法が勧められます。遠隔転移巣の切除が不可能であって原発巣の切除が可能な場合で、原発巣による症状があるときなどは、原発巣の手術を勧められることがあります。

なお、転移しやすい部位は、肝臓や肺、腹膜、脳、骨などです。肝転移・肺転移の治療には、手術、薬物療法、放射線治療があります。転移した部位が切除可能なときは手術が行われることがあり、手術で切除できない場合でも薬物療法の効果があったときには、手術で切除可能となる場合もあります。脳転移の治療には、手術と放射線治療があります。

内視鏡治療

内視鏡を使って、大腸の内側からがんを切除する方法です。治療の適応は、がんがリンパ節に転移している可能性がほとんどなく、技術的に切除できる大きさと部位にある場合です。がんの深さでいうと粘膜下層への広がりが軽度(1mm)までにとどまっているがんです。

開腹手術と比べて体に対する負担が少なく、かつ、安全に行える治療ですが、出血や穿孔せんこう(穴が開く)が起こる場合もあります。治療のために入院が必要かどうかは、施設によって異なります。

切除した病変は病理検査を行い、組織型やがんの広がりの程度などを確認します。その結果、再発やリンパ節転移の危険性があると判明した場合には、後日追加の手術が必要になることがあります。

1)切除の方法

切除の方法には、内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があり、病変の大きさや部位、肉眼で見た形(肉眼型)、予測されるがんの広がりの程度などによって治療方法が決まります。

(1)内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)

主に、キノコのような形に盛り上がった茎がある病変に対して行われます。内視鏡の先端からスネアと呼ばれる輪状の細いワイヤーを出し、スネアを茎に掛けて病変を絞めつけて、高周波電流で焼き切ります。茎のない、1cmまでの小さなポリープに対しては、高周波電流を用いないで、そのままスネアで切り取るコールドポリペクトミーという方法が主に行われます。

(2)内視鏡的粘膜切除術(EMR)

病変に茎がなく、盛り上がりがなだらかな場合は、スネアが掛けにくいため、病変の下に生理食塩水などを注入してから、病変の周囲の正常な粘膜を含めて切り取ります

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

主にEMRで切除が困難な大きな病変に対しての治療法です(図9)。がんを浮きあがらせるために、病変の粘膜下層に生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウムなどを注入してから、病変の周りを高周波ナイフで徐々に切開し、はぎ取る方法です。EMRと比較すると、治療に時間がかかります。また、出血や穿孔などのリスクも少し高くなります。

手術(外科治療)

内視鏡治療でがんの切除が難しい場合、手術を行います。手術では、がんの部分だけでなく、がんが広がっている可能性のある腸管とリンパ節も切除します。がんが周囲の臓器にまで及んでいる場合は、可能であればその臓器も一緒に切除します。腸管を切除したあとに、残った腸管をつなぎ合わせます。腸管をつなぎ合わせることができない場合には、人工肛門(ストーマ:肛門のかわりとなる便の出口)をおなかに作ります。

1)結腸がんの手術

がんの周囲にあるリンパ節を同時に切除するために、がんのある部位から10cmほど離れたところで腸管を切除します。がんがある部位によって切除する腸管の範囲が決まり、部位により回盲部切除術、結腸右半切除術、横行結腸切除術、結腸左半切除術、S状結腸切除術などの方法があります。また、がんを切除できない場合には、便が流れるように迂回路を作る手術(バイパス手術)や人工肛門(ストーマ)を作る手術を行うことがあります。

2)直腸がんの手術

直腸は骨盤内の深く狭いところにあり、周りには前立腺・膀胱ぼうこう・子宮・卵巣があり、出口は肛門につながっています。直腸がんの部位や進行の状況により、直腸局所切除術・前方切除術・直腸切断術・括約筋間直腸切除術の中から適切な方法を選びます。

がんがある場所によって、肛門を残す場合と人工肛門(ストーマ)を作る場合があります。また、直腸の周囲には排尿機能や性機能を調節する自律神経があります。そのため、がんが自律神経の近くに及んでいなければ、手術後に機能障害が最小限ですむよう、自律神経を残す手術を行います(自律神経温存術)。

(1)直腸局所切除術

早期のがんなどで、がんとその近くの部分だけを切除すればよい場合には、がんが肛門のすぐ近くにあれば、がんを直接または内視鏡で見ながら切除する経肛門的切除を行います。それ以外に、うつぶせの状態でお尻側からメスを入れ、仙骨(骨盤の後ろ側の骨)の横からがんを切除する経仙骨的切除や経括約筋的切除と呼ばれる方法があります。

(2)前方切除術

おなか側から切開し、がんがある腸管を切除して、縫い合わせる方法です。腸管の切り口を上部直腸(腹膜反転部より上)で縫い合わせるのが高位前方切除術で、下部直腸(腹膜反転部より下)で縫い合わせるのが低位前方切除術です。低位前方切除術では、一時的な人工肛門(ストーマ)を作る場合があります。

(3)直腸切断術

肛門に近い直腸がんでは、がんを完全に治すことを目指して、直腸と肛門を一緒に切除し、永久的な人工肛門(ストーマ)を作ります。高齢の人では肛門を締める筋肉(肛門括約筋)の力が低下していることが多く、がんが肛門から離れていても、人工肛門の造設を勧められることがあります。また、直腸のみ切除して肛門を残す場合でも、腸管は縫い合わせないで、人工肛門を作るハルトマン手術を行うこともあります。

(4)括約筋間直腸切除術(ISR)

肛門に近い下部直腸がんでも、がんを切除でき、手術後に肛門の機能が保てることが見込めるときは、肛門括約筋の一部のみ切除して肛門を温存し、永久的な人工肛門(ストーマ)を避ける手術ができる場合があります。ただし、がんの深達度が深くなるにつれ再発率が高くなるという報告や、手術後に排便機能が低下する可能性もあるため、この手術が可能かどうかは、担当医とよく相談して決める必要があります。

人工肛門(ストーマ)について

人工肛門(ストーマ)をおなかに作る場合には、多くの人が不安を感じます。ストーマは一見「痛そう」に見えますが、痛みを伝える神経がないので、排泄時や触れた際に痛みを感じることはありません。

手術後に便を処理する方法や、ケアの方法を看護師とともに練習します。便をためるストーマ袋には防臭加工がされているため、トイレで便を処理するとき以外は臭うことはほとんどなく、扱いに慣れれば漏れることもありません。また、仕事や外出、軽い運動や入浴など、通常の生活を送ることができます


腹腔鏡ふくくうきょう下手術・ロボット支援下手術

腹腔鏡下手術では、二酸化炭素でおなかをふくらませ、おなかの中を内視鏡(腹腔鏡)で観察しながら手術を行います。腹腔鏡下手術は開腹手術に比べておなかのきず(創)が小さいため、手術後の痛みが少なく回復が早いという長所がある一方、開腹手術に比べて手術時間が長くなりやすくなります。がんの部位や体格、以前に受けた手術などにより、手術の難しさが左右されるため、腹腔鏡下手術を受けるかどうかは、担当医とよく相談してください。

また、腹腔鏡下手術と同じように、二酸化炭素でおなかをふくらませ、内視鏡と関節のついたロボットアームを挿入して手術を行うロボット支援下手術があります。腹腔鏡下手術と比較して、より繊細な手術操作が可能となると期待されています。しかし、長期的な治療成績についてはまだ十分には分かっていないため、ロボット支援下手術が可能かどうかは、担当医とよく相談してください。

4)術後合併症

縫合不全、創感染そうかんせん腸閉塞ちょうへいそくなどが起こることがあります。合併症が起こった場合には、それぞれの状況に応じて治療が行われます。

(1)縫合不全

腸管を縫い合わせたつなぎ目(吻合部ふんごうぶ)から腸の内容物が漏れることです。周囲に腹膜炎(腹腔の内面や臓器の表面を覆っている膜の炎症)が起こり、発熱や腹痛などの症状が出ます。直腸がんのように肛門に近いところでつなぐ手術では、ほかの場所に比べて縫合不全が起こりやすくなります。感染や炎症が軽い場合は食事の中止や、点滴治療で治ることもありますが、腹膜炎の症状がある場合は、再手術でおなかの中を洗浄し、人工肛門(ストーマ)を作ることが原則です。

(2)腸閉塞

腸閉塞は、腸の炎症による部分的な癒着ゆちゃく(本来はくっついていないところがくっついてしまうこと)などによって、腸管の通りが悪くなる状態のことをいいます。便やガスが出なくなり、おなかの痛みや吐き気、嘔吐おうとなどの症状が出ます。多くの場合、食事や水分を取らずに点滴をしたり、胃や腸に鼻からチューブを入れて胃液や腸液を出したりすることなどで回復しますが、手術が必要になることもあります。

(3)排尿障害

手術の内容によっては、排尿を調節している自律神経が影響を受けることがあり、尿意を感じない、排尿してもスッキリしない、などの症状があらわれることがあります。また、尿が出せなくなることもあります。薬で改善することが多いですが、導尿(カテーテルという細い管を尿道から膀胱に挿入して尿を採る処置)が必要になることがあります。担当医と相談して、必要に応じて泌尿器科の医師の診察を受けるとよいでしょう。

(4)排便障害

手術後には、腸を切除した影響や癒着によって排便が不規則になったり、下痢や便秘、ガスが出にくくなりおなかが張ったりする症状があらわれる場合があります。多くの場合、手術から1〜2カ月たつと落ち着きます。

直腸がんの手術後には、1日に何度も便意を感じることがあります。下痢が起こった場合は、脱水症状を避けるため、水分を多めに取りましょう。担当医から整腸剤を処方されることがあります。

ガスが出にくくておなかが張ったり、便秘になったりした場合には、おなかを温めたり、マッサージをしたり、水分を十分に摂取することが大切です。担当医から緩下剤(便を柔らかくする薬)を処方されることがあります。排便や排ガスが全くない場合は腸閉塞の前触れの可能性があります。すぐに担当医に相談しましょう。