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2024-10-17

肺がんの病気、症状、治療、緩和ケアについて 緩和ケア施設(ホスピス)

福岡市でがん難病専門緩和ケア施設(ホスピス専門)の住宅型有料老人ホーム ひいの邱 と サービス付高齢者向け住宅 ながおの郷 を運営しております株式会社NICEとグループホーム ひいの郷 を運営しております有限会社エス・エイチ・シーです。


今回は肺がんについて書いていきます。今後もNICEでは肺がんの患者様を積極的支援・お受入れしていきます。

肺がんの病態

肺がんは、肺の組織内で異常な細胞が増殖し、制御不能になり、腫瘍を形成する病気です。肺がんは、組織学的に大きく**小細胞肺がん(SCLC)非小細胞肺がん(NSCLC)**に分けられます。

1. 小細胞肺がん(SCLC)

小細胞肺がんは、肺がん全体の約15~20%を占め、進行が早く、転移しやすいのが特徴です。早期に血流やリンパ系を通じて他の臓器に広がるため、発見時には既に進行がんであることが多いです。

2. 非小細胞肺がん(NSCLC)

非小細胞肺がんは肺がんの約80~85%を占め、進行が比較的ゆっくりしています。さらに、以下の3つの主な型に分類されます:

  • 腺がん(Adenocarcinoma): 最も一般的なタイプで、肺の外側に発生しやすい。非喫煙者でも発症することがあります。
  • 扁平上皮がん(Squamous cell carcinoma): 気管や大気道に発生しやすく、喫煙者に多く見られるタイプ。
  • 大細胞がん(Large cell carcinoma): 特定の形態を持たないため「大細胞」と呼ばれ、全体の約10%を占めます。どの部位にも発生し得るが、進行が早いです。

肺がんの原因

肺がんの主な原因は、喫煙です。たばこの煙には、数百種類の有害物質や発がん性物質が含まれており、長期的に吸入することで肺細胞のDNAに損傷を与え、がん化を促進します。また、受動喫煙アスベストラドンガスへの長期間の曝露、家族歴、そして遺伝的な要因も関与することがあります。

肺がんの症状

肺がんは初期には症状が現れにくく、進行してから発見されることが多いですが、以下のような症状が現れることがあります。

  1. : 慢性的な咳や、これまでにない咳が続くことがあります。血痰(血の混ざった痰)が出ることもあります。
  2. 呼吸困難(息切れ): 肺がんが気道を塞いだり、肺自体を侵したりすることで、呼吸が困難になることがあります。
  3. 胸痛: 肺周囲の膜(胸膜)に浸潤すると、深呼吸や咳の際に胸痛が感じられます。
  4. 体重減少と食欲不振: 原因不明の体重減少や食欲不振が起こることがあります。
  5. 声のかすれ: がんが声帯を動かす神経を圧迫することで声がかすれることがあります。
  6. 疲労感: 肺がんに伴う貧血や体力の消耗による極度の疲労感が現れることがあります。
  7. 骨痛: 肺がんが骨に転移すると、骨の痛みが現れます。
  8. 頭痛やめまい: 肺がんが脳に転移した場合、頭痛やめまい、さらには神経症状が出現することがあります。

肺がんの診断

肺がんの診断には、以下の検査が行われます:

  • 胸部X線検査: 肺に異常がないかを確認する基本的な検査。
  • CTスキャン: 肺がんの詳細な位置や大きさを調べるために行います。
  • 気管支鏡検査: 気道にカメラを挿入して、がんの部位から組織を採取し、がんの種類や進行度を確認します。
  • 生検: がん組織の一部を採取し、顕微鏡で検査します。
  • 血液検査: がんのマーカー(特定の血液成分)を調べることもあります。

肺がんの治療

肺がんの治療法は、がんの種類、ステージ、患者の全体的な健康状態に基づいて決定されます。

1. 手術

非小細胞肺がんの早期段階であれば、手術で腫瘍を切除することが可能です。手術には以下の種類があります:

  • 部分切除(部分肺切除): 腫瘍と周囲の一部の肺組織を切除する。
  • 葉切除: 肺の一部(肺葉)を切除する。
  • 全肺切除: 肺全体を切除することもあります。

2. 放射線治療

手術が難しい場合や、がんが局所的に進行している場合、放射線治療を行うことがあります。がん細胞を破壊するために高エネルギーの放射線を使用します。

3. 化学療法

化学療法は、がん細胞の成長や分裂を抑制する薬物を使った治療です。全身に効果があるため、転移が広がっている場合に適用されることが多いです。小細胞肺がんでは、化学療法が主な治療法です。

4. 免疫療法

最近の研究により、免疫チェックポイント阻害薬などの新しい薬剤が開発され、免疫療法が有効な治療法として注目されています。免疫療法は、体の免疫システムを強化し、がん細胞と闘う力を高めます。

5. 分子標的治療

特定の遺伝子変異を持つ肺がん(特に腺がん)に対しては、分子標的治療が有効です。がん細胞の増殖に関わる特定の分子を攻撃する薬剤を使用します。

緩和ケア

肺がんの進行度が進んでいる場合や、治癒が困難な状態では、緩和ケアが非常に重要となります。緩和ケアは、症状を和らげ、患者の生活の質を向上させることを目的としています。

  1. 痛みの管理: がんの進行に伴う痛みを、オピオイドなどの鎮痛薬でコントロールします。
  2. 呼吸困難の緩和: 酸素療法や呼吸リハビリテーションを通じて、呼吸を楽にする治療が行われます。
  3. 精神的支援: 肺がんの診断や進行による精神的な苦痛に対して、心理的サポートやカウンセリングが提供されます。
  4. 栄養サポート: 食欲不振や体重減少がある場合、栄養士が食事療法やサプリメントを提案することがあります。
  5. ホスピスケア: 最期の段階では、患者とその家族の希望に沿った穏やかな最期を迎えるためのホスピスケアが提供されます。

肺がんは進行が速い場合も多く、早期発見と適切な治療が重要です。

緩和ケアは、進行性の病気を抱える患者の生活の質を向上させるために行われる包括的な医療ケアであり、症状の管理精神的、社会的、スピリチュアルな支援に重点を置いています。肺がんなど、治癒が難しい進行がんの患者に対しては、治療の一環として早期から緩和ケアを取り入れることが推奨されています。

緩和ケアの目的

  1. 症状の緩和: 身体的な苦痛や不快感を和らげ、患者が日常生活をできるだけ快適に過ごせるよう支援します。
  2. 心理的サポート: 不安や抑うつ、恐れといった精神的な負担を軽減し、心の平穏を促します。
  3. 家族の支援: 家族が患者を支える上での負担やストレスを軽減し、ケアの質を高めます。
  4. 意思決定のサポート: 患者とその家族が治療やケアの選択を行う際に、医療チームが情報を提供し、共に考えます。

肺がんにおける具体的な緩和ケア

肺がん患者は、疾患の進行に伴い様々な症状を経験します。これらの症状を適切に管理することが、緩和ケアの中心となります。

1. 痛みの管理

痛みは、がんの進行や転移に伴い、非常に辛い症状の一つです。緩和ケアでは、痛みを評価し、適切な治療を提供します。使用される薬剤には、以下のものがあります:

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs): 軽度から中等度の痛みを管理します。
  • オピオイド(モルヒネ、オキシコドンなど): 中等度から重度の痛みを緩和するために使用されます。薬剤の調整により、過度な眠気や便秘などの副作用を最小限に抑えます。
  • 神経ブロックや局所麻酔: 特定の神経に関する痛みがある場合、これらの手法が用いられることがあります。


2. 呼吸困難の管理

肺がんの患者は、呼吸困難(呼吸がしづらい、息苦しい)を感じることが多く、これが生活の質に大きな影響を与えます。以下の方法で症状を緩和します:

  • 酸素療法: 酸素濃度が低下している場合、酸素吸入によって呼吸を楽にします。
  • 呼吸補助装置(CPAPなど): 肺の機能を補助するために、持続的に気道に陽圧をかけるデバイスが用いられることもあります。
  • 呼吸リハビリテーション: 呼吸法を学び、体力を回復させるためのトレーニングを行います。
  • 薬物療法: 気管支拡張薬やステロイドが、呼吸を改善するために使用されます。

3. 消化器症状の管理

肺がんの進行や治療に伴って、消化器症状(吐き気、嘔吐、便秘、食欲不振など)が発生することがあります。これらの症状を緩和するために以下のアプローチがとられます:

  • 抗吐剤: 吐き気や嘔吐を抑える薬を使用します。
  • 下剤: 化学療法やオピオイド使用に伴う便秘には、下剤が処方されることがあります。
  • 栄養管理: 栄養士の指導の下、患者が適切な栄養を摂取できるようサポートします。食事摂取が困難な場合は、経口栄養補助や点滴が行われます。

4. 精神的なケア

肺がん患者は、診断や治療によるストレス、不安、抑うつといった精神的な負担に悩まされることが多いです。精神的なケアは、緩和ケアの重要な一部を占めます。具体的には:

  • 心理カウンセリング: 患者の不安や恐怖を軽減するために、専門のカウンセラーや臨床心理士が支援を行います。
  • 抗うつ薬や抗不安薬: 必要に応じて、精神的な苦痛を軽減するための薬物療法が行われます。
  • サポートグループ: 同じようにがんと闘っている患者同士での交流を通じて、感情的な支えを得ることができます。

5. 疲労感の管理

肺がんの進行や治療によって、患者は極度の疲労感を感じることがあります。この疲労感は、休息だけでは十分に回復しないことが多く、日常生活の中で大きな負担となります。緩和ケアでは以下の方法で対応します:

  • エネルギー保存の指導: 日常生活でエネルギーを効率よく使うためのアドバイスや指導が行われます。
  • 軽い運動やリハビリ: 適度な運動を取り入れることで、筋力を維持し、疲労を軽減する効果があります。
  • 栄養管理: 疲労感を軽減するため、バランスの取れた食事が推奨されます。

6. 精神的・スピリチュアルケア

患者が持つ価値観や信念、スピリチュアルな問題についても支援が行われます。これには宗教的な信仰に基づくケアも含まれる場合があり、スピリチュアルケアの専門家が関わることがあります。患者やその家族が、がんという現実に直面しつつ、心の平穏を見つけられるようサポートします。

家族のサポート

緩和ケアでは、患者本人だけでなく、家族への支援も重要な役割を果たします。家族はしばしば、患者のケアや日常生活のサポートを行う一方で、精神的にも大きなストレスを抱えることがあります。緩和ケアチームは以下のようなサポートを提供します:

  • 情報提供: 患者の病状や治療、ケアに関する正確な情報を提供し、家族が状況を理解できるようサポートします。
  • カウンセリング: 家族も心理的なサポートを必要とすることが多いため、カウンセリングが提供されます。
  • レスパイトケア: 介護の負担を軽減するため、一時的に患者をケア施設で預かるサービスが提供されることもあります。

ホスピスケア

ホスピスケアは、治療が困難になった患者や、余命が限られた患者に対して、最期の時期を安らかに過ごせるよう支援するケアです。ホスピスでは、以下のようなケアが提供されます:

  • 痛みや症状の管理: 最期の段階でも痛みや不快感を最小限にするための治療が続けられます。
  • 精神的サポート: 患者が自分らしく最期を迎えるための精神的支援が行われます。
  • 家族の支援: 家族もまた、死を迎える過程で精神的、感情的なサポートを受けることができます。

緩和ケアは、治療の一環として早期から取り入れることで、患者と家族の生活の質を大きく向上させることができます。