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2024-06-08

胃がんについて知る① 緩和ケア専門施設(ホスピス)

福岡市でがん難病専門緩和ケア施設の住宅型有料老人ホーム ひいの邱 と サービス付高齢者向け住宅 ながおの郷 を運営しております株式会社NICEとグループホーム ひいの郷 を運営しております有限会社エス・エイチ・シーです。

今回は胃がんについて書いていきます。今後がん難病施設を運営するNICEでも積極的に胃癌の利用者様をお受入れしていきます。

胃がんとは

胃がんは、胃の壁の内側をおおう粘膜の細胞が何らかの原因でがん細胞となり、無秩序に増えていくことにより発生します。がんが大きくなるにしたがい、徐々に粘膜下層、固有筋層、漿膜へと外側に深く進んでいきます。

がんがより深く進むと、漿膜の外側まで達して、近くにある大腸や膵臓すいぞう、横隔膜、肝臓などにも直接広がっていきます。このようにがんが浸み出るように周囲に広がっていくことを浸潤しんじゅんといいます。がんが漿膜の外側を越えると、おなかの中にがん細胞が散らばる腹膜播種が起こることがあります。また、がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って移動し、胃から離れた別の臓器で増える転移が起こることもあります。

なお、胃がんの中には、胃の壁を硬く厚くさせながら広がっていくタイプがあり、これをスキルス胃がんといいます。スキルス胃がんは進行が早く、腹膜播種が起こりやすい特徴があります。また、内視鏡では診断することが難しい場合もあります。症状があらわれて見つかったときには進行していることが多く、治りにくいがんです。

症状

胃がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどなく、かなり進行しても症状がない場合もあります。

代表的な症状は、胃の痛み・不快感・違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などです。また、がんから出血することによって、貧血が起こることや、黒い便(血便)が出ることもあります。しかし、これらは胃がんだけではなく、胃炎や胃潰瘍いかいようでも起こる症状です。そのため、胃炎や胃潰瘍などで内視鏡検査を受けたときに、偶然がんが見つかることもあります。

なお、食事がつかえる、体重が減る、といった症状がある場合は、進行胃がんの可能性もあります。

組織型分類

がんの組織型(がんを顕微鏡で観察した外見)分類では、胃がんのほとんどが腺がんで、細胞や組織の特徴から、大きく分化型と未分化型に分けられます(図2)。一般的に、分化型は進行が緩やかで、未分化型は進行が速い傾向があるといわれています。また、未分化型は、がん細胞があまりまとまりを作らず、胃の壁にバラバラと浸み込むように広がっていくものが多くあります。

なお、スキルス胃がんは未分化型が多いですが、未分化型のすべての胃がんがスキルス胃がんというわけではありません。

関連する疾患

細菌の一種であるヘリコバクター・ピロリに感染すると、胃に炎症が起きたり、潰瘍ができたりすることがあり、胃がんになる可能性が高くなると報告されています。

なお、がん以外の良性の胃の疾患に、胃ポリープ、胃潰瘍、慢性胃炎などがあります。胃潰瘍は胃の痛み、慢性胃炎では胃の不快感や胸やけなど、胃がんと似たような症状が起こることがあります。

胃がん 検査

胃がんが疑われた場合には、まず、「がんかどうかを確定するための検査」を受けます。がんであることが確定した場合には、治療方針を決めるために、「がんの進行度(進み具合)を診断する検査」を受けます。

がんかどうかを確定するための検査では、まず、病変の有無や場所を調べるために、内視鏡検査やX線検査(バリウム検査)などが行われます。内視鏡検査で胃の内部を見て、がんが疑われるところがあると、その部分をつまんで取り、病理検査で胃がんかどうかを確定するための生検が行われます。

治療方針を決めるための進行度を診断する検査では、がんの深さや、胃から離れた臓器やリンパ節などへの転移、胃に隣り合った膵臓すいぞう、肝臓、腸などの臓器への広がりを調べます。そのために、通常は、造影剤を使ったCT検査が行われます。MRI検査やPET検査が行われることもあります。

腹膜播種が強く疑われる場合には、大腸が狭くなっていないかどうかを調べるために、注腸検査や内視鏡検査が行われることがあります。また、全身麻酔をして審査腹腔鏡が行われることがあります。

1.内視鏡検査

口や鼻から内視鏡を挿入し、胃の内部を直接見て、がんが疑われる部分(病変)の場所や、その範囲と深さを調べる検査です。病変をつまんで取り、病理診断をする生検が行われる場合もあります。

また、がんの深さをより詳しく見たり、周囲の臓器やリンパ節への転移を調べたりするため、超音波内視鏡検査が行われる場合もあります。

2.X線検査(バリウム検査)

バリウムを飲んで、胃の形や粘膜などの状態をX線写真で確認する検査です。

3.生検・病理検査

胃の内視鏡検査や審査腹腔鏡検査で採取した組織について、「がんがあるか」「どのような種類のがんか」などを顕微鏡で調べる検査です。

4.CT検査・MRI検査

離れた別の臓器やリンパ節への転移、肝臓など胃の周りの臓器への浸潤しんじゅんなどを調べるために、CT検査やMRI検査が行われます。CT検査はX線、MRI検査は磁気を使って体の断面を撮影し、画像にする検査です。

5.PET検査

リンパ節や他の臓器への転移の有無、がんの再発の有無などが通常のCT検査でははっきりしない場合に行われることがある検査です。放射性フッ素を付加したブドウ糖液を注射し、がん細胞に取り込まれるブドウ糖の分布を撮影することで、がんの広がりを調べます。

6.注腸検査・大腸内視鏡検査

大腸の胃のすぐ近くを通っている部分にがんが広がっていないか、腹膜播種によって大腸が狭くなっていないかなどを調べるために行われることがある検査です。注腸検査は、肛門からバリウムと空気を注入し、X線写真を撮ります。内視鏡検査は、肛門から内視鏡を挿入し、大腸の内側を観察します。

7.審査腹腔鏡

胃がんが進行して腹膜播種が疑われる場合に行われることがある検査です。腹膜播種の有無はCTなどの検査だけでは分かりにくいため、正確な病期(ステージ)を診断することを目的に行われます。全身麻酔をしておなかに小さな穴を開け、腹腔鏡と呼ばれる細い内視鏡を挿入しておなかの中を直接観察します。また、転移が疑われる部位の組織や腹水を採取し、病理検査によって腹膜播種の有無を確認します。

8.腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカー検査は、がんの診断の補助や、診断後の経過や治療の効果をみることを目的に行われます。腫瘍マーカーとは、がんの種類によって特徴的に作られるタンパク質などの物質で、がん細胞やがん細胞に反応した細胞によって作られます。しかし、腫瘍マーカーの値の変化だけでは、がんの有無やがんが進行しているかどうかは確定できません。また、がんがあっても腫瘍マーカーの値が高くならないこともあります。

胃がんでは、手術後の再発や薬物療法の効果判定の参考に、CEAやCA19-9などが使われることがあります。

1.病期と治療の選択

治療法は、がんの進み具合を示すステージ(病期)やがんの性質、体の状態などに基づいて検討します。胃がんの治療を選択する際には、次のことを調べます。

1)ステージ(病期)

がんの進行の程度は、「ステージ(病期)」として分類します。ステージは、ローマ数字を使って表記することが一般的で、Ⅰ期(ステージ1)・Ⅱ期(ステージ2)・Ⅲ期(ステージ3)・Ⅳ期(ステージ4)と進むにつれて、より進行したがんであることを示しています。なお、胃がんではステージのことを進行度ということもあります。

胃がんのステージはⅠ期~Ⅳ期まであり、次のTNMの3種のカテゴリー(TNM分類)の組み合わせで決まります。

Tカテゴリー:がんの深達度(がんの深さ)(図5)
Nカテゴリー:領域リンパ節(胃の近くにあるリンパ節)への転移の有無
Mカテゴリー:遠隔転移(がんができた場所から離れた臓器やリンパ節への転移)の有無

胃がんでは、がんの深達度が粘膜および粘膜下層にとどまるT1のものを「早期胃がん」といい、粘膜下層を越えて広がるものを「進行胃がん」といいます。

なお、胃がんの治療方針を決めるためのステージ(病期)には、臨床分類と病理分類の2つの分類があります。

(1)臨床分類

臨床分類は、治療方針を決めるときに使う分類です。画像診断や生検、審査腹腔鏡などの結果に基づいてがんの広がりを推定します(表1)。

(2)病理分類

病理分類は、手術で切除した病変を病理診断し、実際のがんの広がりを評価した分類です。術後補助化学療法が必要かどうかなど、手術後の治療方針を判断したりするときなどにも使われます(表2)。病理分類による分類は、手術前の検査によって推定した臨床分類と一致しない場合があります。

2)治療の選択

治療は、がんの進行度(ステージ)に応じた標準治療を基本として、本人の希望や生活環境、年齢を含めた体の状態などを総合的に検討し、担当医と話し合って決めていきます。

遠隔臓器(胃以外の臓器)やリンパ節への転移がなく、がんの深達度が粘膜層までの場合は、内視鏡治療(内視鏡的切除)が中心です。がんが粘膜下層に達しているときは、手術(外科治療)を検討します。手術後には、切除した病変の病理分類を行い、必要に応じて薬物療法が行われることがあります。遠隔臓器への転移がある場合には、状況によって、薬物療法などの治療法を検討します。

2.内視鏡治療(内視鏡的切除)

内視鏡を使って胃の内側からがんを切除する方法で、がんが粘膜層にとどまっている場合に行われます。リンパ節転移の可能性がごく低い早期のがんで、一度に切除できると考えられる場合に行うのが原則です。手術と比べると、体に対する負担が少なく、がんの切除後も胃が残るため、食生活への影響が少ない治療法です。

内視鏡治療でがんが確実に取りきれたかどうかは、病理診断で確認します。がんが確実に取りきれ、リンパ節転移の可能性が極めて低い場合(根治度A、B)には、経過を観察します。がんが確実に取りきれなかったものの、転移の可能性がごく低い場合(根治度C1)には、再度内視鏡による治療が行われたり、慎重に経過を観察したりするなどします。一方、がんが内視鏡治療では取りきれなかった、あるいは取りきれているが、深さが粘膜下層まで達しているなどの理由でリンパ節転移の可能性がある場合(根治度C2)は、後日、追加で手術が必要となります

1)内視鏡治療の方法

内視鏡の先端から、スネアと呼ばれる輪状の細いワイヤーをかけて、病変を切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)(図7)、高周波ナイフで粘膜下層から病変をはぎ取るように切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があります(図8)。

EMRはがんの大きさが2cm以下で潰瘍のない病変が実施の条件ですが、ESDは2cmを超える潰瘍のない病変や、3cm以下の潰瘍のある病変でも行われます。

3.手術(外科治療)

遠隔転移がなく、内視鏡治療による切除が難しい場合には、手術による治療が推奨されています。手術には、おなかを20cmほど切開する開腹手術と、おなかに小さい穴を開けてそこから専用の器具を挿入して手術を行う腹腔鏡下ふくくうきょうか手術、ロボット支援下腹腔鏡下手術があります。

なお、腹腔鏡下手術やロボット支援下腹腔鏡下手術が推奨されるかどうかは、がんの進行度などによって異なります。また、十分な知識や経験をもつ医師が行うことなどの条件があり、実施できる施設は限られています。

1)手術の方法

手術では、がんと胃の一部またはすべてを取り除きます。同時に胃の周囲のリンパ節を取り除くリンパ節郭清かくせいや、食べ物の通り道をつくり直す再建手術(消化管再建)も行われます。

用語集

(1)胃の切除範囲

切除する胃の範囲は、がんのある部位と進行度によって決まります。胃の切除範囲によっていくつかの方法があり、代表的なものは、胃全摘術、幽門ゆうもん側胃切除術、幽門保存胃切除術、噴門ふんもん側胃切除術です

2)リンパ節郭清

胃を切除する際に、胃の周囲にあるリンパ節も切除します。胃のすぐそばのリンパ節と、胃から少し離れたリンパ節を合わせて切除する「D2リンパ節郭清」が標準的に行われます。早期がんで、リンパ節転移がない場合には、郭清するリンパ節の範囲を狭くした「D1リンパ節郭清」または「D1+リンパ節郭清」が行われます。

(3)消化管再建

消化管再建とは、胃の切除手術の際に、食道と残った胃や腸などの消化管を縫い合わせてつなぎ、新しく食べ物の通り道をつくり直すことです。再建の方法にはいくつかの種類があり、胃の切除範囲などによって決まります。

(4)周辺臓器の合併切除

胃の周囲にある、肝臓、横隔膜、膵臓すいぞう、胆のう、横行結腸などの臓器にがんが浸潤しんじゅんしている場合、胃の切除と同時に、これらの臓器の一部を切除することがあります。これを他臓器合併切除といい、がんを完全に切除することを目指して行われます。

4.薬物療法(化学療法)

胃がんの薬物療法には、大きく分けて「手術によりがんを取りきることが難しい進行・再発胃がんに対する化学療法」と、手術後の再発予防を目的とする「術後補助化学療法」があります。なお、リンパ節転移の状況によっては、手術の前に「術前補助化学療法」が行われる場合もあります。胃がんの薬物療法で使う薬には、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬があります。治療は、これらの薬を単独または組み合わせて、点滴もしくは内服で行います。

細胞障害性抗がん薬は、細胞が増殖する仕組みの一部を邪魔することで、がん細胞を攻撃する薬です。分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わるタンパク質などを標的にして、がんを攻撃する薬です。免疫チェックポイント阻害薬は、免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ(がん細胞が免疫にブレーキをかけるのを防ぐ)薬です。

薬物療法の効果は、内視鏡検査やCT検査で確認します。また、転移した臓器に対する治療の効果は主にCT検査で確認します。この他に、MRI検査やPET検査などで確認することもあります。

(1)一次化学療法
一次化学療法では、細胞障害性抗がん薬を用います。なお、胃がんでは、HER2ハーツーと呼ばれるタンパク質ががん細胞の増殖に関わっている場合があるため、治療前に病理検査を行い、HER2陽性の場合には、HER2タンパク質の働きを抑える分子標的薬を併用することが推奨されています。また、HER2陰性の場合には、免疫チェックポイント阻害薬を併用する場合もあります。

(2)二次化学療法
二次化学療法では、一次化学療法で使用しなかった細胞障害性抗がん薬と分子標的薬を組み合わせて用います。二次化学療法の前には、MSI検査と呼ばれるがんの遺伝子検査を行うことが推奨されています。MSI検査で、MSI-High(遺伝子に入った傷を修復する機能が働きにくい状態)の場合には、免疫チェックポイント阻害薬を用いることもあります。

(3)三次化学療法
三次化学療法では、HER2陰性の場合には、二次化学療法までに使用しなかった細胞障害性抗がん薬、もしくは免疫チェックポイント阻害薬のいずれか、HER2陽性の場合は、一次化学療法、二次化学療法とは異なる種類の分子標的薬を用いることがあります。なお、二次化学療法までに免疫チェックポイント阻害薬を使用した場合は、三次治療で用いることは推奨されていません。

(4)四次化学療法以降
四次化学療法以降は、三次化学療法までで候補になった薬のうち、使用しなかった薬剤に切り替えて治療することを検討します。

2)術後補助化学療法

手術でがんを切除できても、目に見えないようなごく小さながんが残っていて、のちに再発することがあります。こうした小さながんによる再発を予防する目的で行われる化学療法を術後補助化学療法といい、手術後の病理分類で、ステージがⅡまたはⅢの場合に行うことが推奨されています。

手術後の体の状態やがんの進行度を考慮し、細胞障害性抗がん薬の内服か、細胞障害性抗がん薬の内服と他の種類の細胞障害性抗がん薬の点滴を併用する方法を検討します。

5.免疫療法

免疫療法は、免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。2022年7月現在、胃がんの治療に効果があると証明されている方法は、免疫チェックポイント阻害薬を使用する治療法のみです。その他の免疫療法で、胃がんに対して効果が証明されたものはありません。免疫チェックポイント阻害薬を使う治療法は、薬物療法(化学療法)の1つでもあります。

6.緩和ケア/支持療法

がんになると、体や治療のことだけではなく、仕事のことや、将来への不安などのつらさも経験するといわれています。

緩和ケアは、がんに伴う体の痛みだけではなく、心の痛みや社会的なつらさを和らげます。決して終末期だけのものではなく、がんと診断されたときから始まり、がんの治療とともに、つらさを感じるときにはいつでも受けることができます。

支持療法とは、がんそのものによる症状やがんの治療に伴う副作用・合併症・後遺症を軽くするための予防、治療およびケアのことを指します。

胃がんが進行した場合は、消化管が狭くなることによる吐き気や嘔吐、腹水や腹水がたまることによる腹痛、だるさや倦怠感などの症状があらわれることがあります。このような症状や、本人にしか分からないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう。なお、胃の出口がふさがっている場合は、食事ができるように、ステントと呼ばれるチューブのような器具を入れる治療が勧められることもあります。