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2024-05-04

進行性核上性麻痺(PSP)について知る①

福岡市で住宅型有料老人ホーム ひいの邱 と サービス付高齢者向け住宅 ながおの郷 を運営しております株式会社NICEとグループホーム ひいの郷 を運営しております有限会社エス・エイチ・シーです。



今回は神経難病の中でもよく耳にする進行性核上性麻痺について書いていきます。今後がん難病施設を運営するNICEでも積極的に行性核上性麻痺の利用者様をお受入れしていきます。

進行性核上性麻痺とは

 パーキンソン病と同様、中高年で発症し、パーキンソン病と類似した症状が徐々に進行する疾患です。パーキンソン病では主に中脳の黒質という前の部分に病変が見られますが、この疾患では中脳の後ろの方が委縮し、タウ蛋白という異常なたんぱく質が蓄積します。

 この部位は上下方向の眼球運動や歩行、姿勢保持に重要な役割を果たしており、進行性核上性麻痺では眼球運動障害や歩行障害、姿勢を保持する反射の障害がみられます。”核上性麻痺”とは、中脳が障害されることによる特徴的な眼球運動障害から名付けられました。10万人中数人程度で比較的稀な疾患とされていますが、実際には正確な診断がなされていない患者さんが多く、また高齢化とともに近年急激に増加しており、パーキンソン病と並んでごく一般的な神経疾患と考えています。


進行性核上性麻痺の症状

 上下方向の眼球運動が障害され、体や頸部のジストニアとよばれる筋緊張の異常によりパーキンソン病とは逆に反ってくる患者さんもいます。歩行がすくむようになり、後方、前方に転びやすくなります。またろれつがまわりにくい、飲み込みにくいといった口周りの症状がみられます。パーキンソン病とは違い、認知機能の低下も多くみられます。

 パーキンソン病とは逆に四肢の筋緊張が低下していたり、小脳の障害に伴う症状が目立つ患者さんもいて、同じ病気であっても患者さんによって症状は多様です。症状の左右差は少ないことも特徴のひとつとされています。

核上性眼球運動障害PSPに特徴的で、眼球を自発的に動かすことができなくなりますが、他動的に頭を動かせば動きます。はじめは垂直方向(特に下向き)に制限されますが、進行すると全方向に制限されます
仮性球麻痺しゃべりにくい、飲み込みにくいといった症状です
体幹と項部のジストニア体幹の筋肉が固くなり、首が後ろに反ってくるのが特徴です
認知機能障害物忘れをしたり、思考がゆっくりになったり、無感動になったり(仮面様顔貌)、抑うつがでたりします。物事を抽象化したり、グループ化して考えることが苦手になったり、段取りがうまくできなくなったりします
起立、歩行障害起立や歩行が障害されます、バランスが悪くなり特に後方へ転倒しそうになります。



病気の原因

上記の症状は病気の初期からすべてが現れるわけではありません。PSPの最初の報告者であるSteeleは次のように経過を分類しています。

I期歩行不安定易転倒性(後ろに倒れやすい、
姿勢反射障害、
危険認知度の低下による)
動作緩慢(動作が遅くなり思考が緩慢になる)霧視(むし、目がボヤーッとする)
発語障害(ことばが出て来にくい)
認知機能障害(物忘れ、思考の緩慢、無感情、抑うつ、抽象化する思考の障害)
II期核上性眼球運動障害(垂直方向に動かせなくなる)
開眼失行、
眼瞼痙攣(眼を閉じた後、開けにくくなります)
歩行障害項部ジストニア(体幹の筋肉が固くなり、頚部が後方に反る)
仮面様顔貌(表情がかたくなる)
構音・嚥下障害認知障害
III期眼球運動の完全障害(垂直方向だけでなく全方向に動かせなくなる)
体幹の固縮・項部硬直起立不能・寝返り困難認知障害著明発語障害不明無動・無言状態




進行性核上性麻痺の診断

 症状、経過、診察所見が最も重要なのはパーキンソン病とかわりませんし、パーキンソン症候群とよばれる疾患群との区別はとても重要です。進行性核上性麻痺の場合、脳MRIで中脳の後ろ側が委縮しハチドリの頭のような形になり(図1)、大脳基底核の機能検査(DATSCAN)(図2)で異常がみられます。パーキンソン病で異常がみられるMIBG心筋シンチグラフィーでは異常がみられないので、パーキンソン病との区別に役立ちます。


 パーキンソン病と異なり、薬物療法は効果が少ないとされています。しかし特に初期にはパーキンソン病の治療薬が歩行障害などに有効なこともあり、副作用に注意しながら試す価値はあると思います。
 また定期的なリハビリは筋肉の衰えを防ぎ、転倒を防止するためにも重要です。NICEでは定期的な病状評価、歩行障害や嚥下障害のリハビリなどを実施し、少しでも病状の進行を防ぐよう努力しています。進行期にみられる誤嚥性肺炎、褥瘡などの合併症の評価・ケアもきちんと対応するようにしています。


PSPの治療

残念ながらPSPの特効薬は現在のところありません。しかしながら症状に対応するための薬はあります。パーキンソン病の薬が固縮に効果があることがあり、パーキンソン病の薬を使ったりします。

  • ドパミン作用薬(パーキンソン病治療薬)
  • 三環系抗うつ剤(抑うつに効果があります)
  • セロトニン代謝に作用する薬剤
  • ノルアドレナリン作動薬
  • コリン作動薬
  • 塩酸アマンタジン