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骨髄異形成症候群について知る ① 緩和ケア専門施設(ホスピス)
福岡市でがん難病専門緩和ケア施設の住宅型有料老人ホーム ひいの邱 と サービス付高齢者向け住宅 ながおの郷 を運営しております株式会社NICEとグループホーム ひいの郷 を運営しております有限会社エス・エイチ・シーです。
今回は骨髄異形成症候群について書いていきます。今後がん難病施設を運営するNICEでも積極的に骨髄異形成症候群の利用者様をお受入れしていきます。
骨髄異形成症候群(MDS)とは
骨髄異形成症候群(MDS)とは、あらゆる血液細胞を作り出すもとになる細胞(造血幹細胞)のDNAに異常が起こり、これらの細胞が自分のコピーを増やして異常な形態の血液細胞を作り出す一方、正常な血液細胞が減少してしまう疾患です。またこの疾患には、急性骨髄性白血病*になりやすいという特徴もあります。
60歳以上の方に発症することが多く、年齢を重ねるほど発症率は高くなります。70歳以上の方では、10万人あたり年間約30人以上が新しく骨髄異形成症候群と診断される、と推定されています。また、理由はわかっていませんが、女性よりも男性の発症頻度がだいぶ(日本の調査では1.9倍)高いことも知られています。
骨髄異形成症候群は、塊り(腫瘤)を作ったり、組織を破壊したりするわけではなく、この点では、いわゆる「がん」とは似ていません。しかし、この疾患を発症する原理は実はがんと似ています。つまり、骨髄に住んでいる造血幹細胞のDNAに傷がつき、この細胞がまわりの正常な細胞を押しのけて自分のコピーを増やしていきます。このコピー細胞は、がん細胞のような振る舞いはせず、一定程度血液細胞を作りますが、あまり上手に作れなかったり、途中で作るのをやめたまま死んだりしてしまいます。この状態は無効造血と呼ばれ、骨髄の細胞数は増えるのに、白血球、赤血球、血小板といった血液細胞がいずれも減少していきます。
「異形成」とは
骨髄異形成症候群患者の血流中の血液細胞や、骨髄中の造血細胞を、顕微鏡で観察すると特徴的な形態異常を示します。これは「異形成」と呼ばれます。病名は、この観察からつけられたものです。
骨髄異形成症候群の種類
骨髄異形成症候群は、大まかには、急性骨髄性白血病に特徴的な「芽球」が一定程度まで増加しているのか、そうでないのか、で分けます。また、芽球が増加していないタイプは、環状鉄芽球と呼ばれる、鉄が環状に溜まって見える細胞が増加しているか否か、などで分けます。
芽球増加の有無
「芽球」は、顕微鏡では丸い大きな核をもつ細胞として観察され、造血過程が進んでいない未熟な細胞です。骨髄異形成症候群は、この芽球の割合が骨髄にいる造血細胞の20%未満と定義されています。20%以上の場合には、急性骨髄性白血病と診断されます。つまり、骨髄異形成症候群を引き起こすDNAの異常がおきると、「芽球」が少し増えることがあるものの、発病した時点では20%には達しないのです。これに対し、はじめから急性骨髄性白血病として発病するようなDNAの異常がおきると、発病時点で「芽球」が20%以上になるわけです。ただし、芽球の割合が多いほど、骨髄異形成症候群から急性骨髄性白血病に移行しやすいことがわかっています。このように骨髄異形性症候群から二次的に発生する急性骨髄性白血病は、はじめから急性骨髄性白血病として発病する疾患とは成り立ちが異なります。
一方、「芽球」が少ない(骨髄の造血細胞の5%未満の)骨髄異形性症候群患者さんは、急性骨髄性白血病になる可能性が健康なヒトに比べれば高いのですが、「芽球」が多いタイプの骨髄異形性症候群に比べると低いことがわかっています。
骨髄異形成症候群の症状-貧血や感染症など
貧血—組織の酸素不足による症状が出現する
医学的に貧血というのは、赤血球が減ることを意味しています。赤血球は、肺から体のあらゆる組織に酸素を運ぶ働きをしています。このため、貧血になると、体の隅々で酸素が足りなくなります。このような酸素不足は、体がだるい、疲れやすいといった症状として現れます。
一方、組織が酸素不足になると、心臓は多くの血液を体に流すことで組織に赤血球を送ろうとしますし、また肺はより多く呼吸をして酸素を取り入れようとします。こうした心臓や呼吸の働きは、動悸や息切れといった症状として現れます。さらに貧血が悪化すると、脳の血管の拍動や拡張が刺激になって、頭痛が生じます。
出血しやすくなる
血小板は、出血を止める働きをしています。そのため、血小板が減少した場合は、出血しやすい、止血しにくい、といった症状が現れます。たとえば、腕や足をぶつけていないのに痣ができたり、搔きむしっていないのに、紫斑(赤い斑点)ができたりします。
もう少し進行すると、歯茎や口腔粘膜など、粘膜からの出血が出現するようになります。女性の場合は、生理の出血が多くなることもあり、血圧がさがるほど出血することもあります。頭の中に出血するようなことがあると、命にかかわります。
感染症にかかりやすくなる
骨髄異形性症候群では、白血球の中で特に好中球という白血球が減少します。好中球は、細菌を食べる働きをしています。たとえば、肺に細菌が入り込んだ場合、健康な状態であれば少量の細菌は好中球が食べてくれるので何もおきないところ、好中球が減少すると、少量の細菌でも肺炎になってしまいます。あるいは、ニキビは毛嚢に細菌が入り込んで炎症を起こした状態(毛嚢炎)ですが、好中球が減少した状態では、毛嚢炎が重症化することもあります。さらに、私たちの大腸には多量の細菌が存在し、ある意味で体の一部として共存しています。ただし、この共存関係は、細菌が粘膜を超えて体に侵入するとすぐに好中球が食べてくれる、という条件で成立しています。好中球が減ると、この平和な共存関係がくずれ、細菌が粘膜の内側に入り込むために、感染症が成立してしまいます。
血球が減る他の疾患と鑑別が必要
骨髄異形性症候群は、3種類の血液細胞がうまく作られずに減少する疾患ですが、こうした意味でよく似た疾患として再生不良性貧血という疾患が挙げられます。貧血、血小板減少(出血しやすい)、白血球減少(特に好中球減少により感染症にかかりやすい)が起きている一方、他の臓器には異常がないため、症状から鑑別することは困難です。
しかし、骨髄検査を行うと鑑別できます。骨髄異形成症候群では異常造血幹細胞のコピーにより、形のおかしい造血細胞が正常より増えていることはすでに述べたとおりです。これに対し、再生不良性貧血は造血幹細胞そのものが減っており、骨髄の中で造血細胞が減少しています。例えて言うと、骨髄異形成症候群は、骨髄という血液工場の中でどんどん製品を作ろうとしているものの、不良品ばかり作っているので、血流という市場まで製品が出回らない。これに対し、再生不良性貧血では、血液工場である骨髄で生産そのものがストップしてしまった状態、ということになります。
骨髄異形成症候群の検査方法-まずは血液検査
血液検査で血算を測定する
まず、血液内科に来た患者さんには、血液検査を行い血算*を測定します。骨髄異形成症候群の場合、血液細胞(白血球、赤血球、血小板)が減っているということが最初の所見です。血算の結果によって詳しく検査を行うかを決めます。また、最初から血液像(白血球分画)*などを詳しく検査する場合もあります。
現在では、血算はもちろん、血液像も器械により自動的に算出されることが一般的になっています。血算や血液像で異常が見つかった場合には、形態異常がないかを検査技師が目視で確認します。形態異常が発見された場合は、MDSを疑い、次の検査へと進みます。
骨髄の検査
血算や血液像で異常が見つかったり、形態異常が疑われたりする場合には、骨髄の検査を行います。骨髄検査には、穿刺吸引検査と、生検検査があります。穿刺吸引検査では、骨髄の中の造血細胞と、血液とが混ざった「骨髄液」を採取し、いろいろな検査を行います。生検検査では、主に病理検査を行います。
- 顕微鏡検査
まず、骨髄液から標本を作成して細胞を染め、顕微鏡で観察します。骨髄には、流血中には通常流れていない、赤芽球や骨髄巨核球、あるいは顆粒系の未熟な細胞がいますので、こうした細胞の数や形態も観察できます。骨髄異形成症候群では、骨髄は通常、正形成(造血細胞の密度が正常の場合と同じくらい)または過形成(正常よりも多い)であり、赤芽球、骨髄巨核球、顆粒系の細胞の1〜3系統に異形成を認めます。
- 染色体検査
骨髄異形成症候群の患者さんの約半数に染色体異常が見つかります。染色体異常の同定は、患者さんのその後の経過を予測するためにも有用なので、染色体検査は必ず行います。
- 細胞表面抗原検査
蛍光色素で標識した抗体を使って、細胞表面抗原を蛍光染色した細胞をフローサイトメトリーという方法で観察します。骨髄異形成症候群では、正常では見られない細胞表面抗原の組み合わせがわかることがあり、診断に有用です。
- 遺伝子検査
WT-1という遺伝子のメッセンジャーRNAの測定は、ルーチンで行われています。この他、最近では、直接DNAをシークエンスという方法で異常を探すことが行われつつあります(ゲノム解析の説明を参照)。ときに治療選択の参考になることもあるため、後々にでもDNAが調べられるように、検体保存が勧められます。
- 病理検査
ホルマリンで固定した骨髄液あるいは骨髄生検検体を、HE染色という染色によって染めて、病理医が診断に用います。免疫染色と呼ばれる染色法も用いられ、診断の補助になることもあります。
同種造血幹細胞移植 骨髄異形成症候群の根治療法
骨髄異形成症候群を完治させる治療法は、同種造血幹細胞移植しかありません。「同種」というのは、自分以外の他のヒトの造血幹細胞をもらう、という意味です(ただし一卵性双生児は除く)。
同種造血幹細胞移植の種類
同種造血幹細胞移植は、造血幹細胞をどのようにしてもらうかによって、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血(さいたいけつ)移植があります。
- 骨髄移植
血縁者(主に兄弟姉妹;最近は親子間も特殊な方法で行われることがあります)、あるいは骨髄バンク(日本には、1つだけの公的な骨髄バンク=ドナーを登録し、説明、同意、検査などを支援し、提供者と患者さんとの橋渡し役をする組織=があります)のドナーから大量の骨髄液を採取し、患者さんに移植(血管から輸注)します。
- 末梢血幹細胞移植
ドナーに薬剤を注射し、造血幹細胞を骨髄から血液中に動員します。そして、血液を採取し、血液分離装置にかけ、造血幹細胞が多い部分だけを抽出し、患者さんに移植(血管から輸注)します。
- 臍帯血移植
臍帯血*は、本来、胎盤とともに廃棄されるものですが、これを廃棄せず、「臍帯血バンク」と呼ばれる施設に集めて、凍結保存しています。移植施設では、患者さんに合う臍帯血を取り寄せて、直前に溶かして、これを移植(血管から輸注)します。これを臍帯血移植といいます。
抗がん剤治療と放射線治療で移植前処置
同種造血幹細胞移植をする場合、移植前処置として、患者さんには大量の抗がん剤治療や放射線治療を受けていただきます。前処置を行う理由は二つあります。一つは、患者さんの体の中に残っているがん細胞(骨髄異形成症候群の細胞)をできるだけ排除することです。もう一つは、患者さんの体の中の免疫細胞を排除して、移植した細胞が拒絶されないようにすることです。このように前処置を行ってから健康な状態のドナー由来の造血幹細胞(骨髄血、末梢血幹細胞、臍帯血に含まれる)を移植することで、ドナー由来の健康な造血が回復します。この際、免疫細胞もドナー由来のものに置き換わっていきます。
移植の前に行う抗がん剤治療と放射線治療は、副作用が大きいため、同種造血幹細胞移植は患者さんへの負担が大変に大きな治療法です。そのため、患者さんの経過の見通しがよいのか悪いのか(予後予測)や、年齢などを考慮して、移植を実施するかどうかを判断します。
予後予測と年齢を考慮
たとえば、50歳前後の比較的若い患者さんで、移植を行わなければあと1〜2年しか生きられないなど予後の見通しが悪い場合は、積極的に移植を薦めます。しかし、72歳の患者さんで、移植を行わない場合の余命を3年と予測する場合はどうか。移植の合併症による重度の後遺症や死亡の危険を考え、移植は行わない、という方針がとられるのが一般的です。
移植治療を行えるのは何歳までという明確な線引きはありません。施設によって65歳までや、70歳まで、などと、異なります。また、移植を行う際は、家族など周囲のサポートが必要になります。そのため、医師には、患者さんの意向も聞きながら、総合的な判断が求められます。
《 ひいの邱・ながおの郷でお受け入れしている入居対象疾患 》
●がん(末期) ●重症筋無力症 ●多発性硬化症 ●多系統委縮症 ●進行性筋ジストロフィー
●筋委縮性側索硬化症(ALS) ●後天性免疫不全症候群 ●ハンチントン病 ●脊髄性筋萎縮症
●シャイ・ドレーガー症候群 ●慢性炎症性脱髄性多発神経炎 ●副腎白質ジストロフィー
●パーキンソン病 ●頸髄損傷 ●進行性核上皮麻痺 ●線条体黒質変性症 ●亜急性硬化性全脳炎
●大脳皮質基底核変性症 ●脊髄小脳変性症 ●スモン ●オリーブ橋小脳萎縮症
●球脊髄性筋萎縮症 ●プリオン病 ●ライソゾーム病 ●人工呼吸器の方
●気管カニューレの方
《 がん・難病専緩和ケア専門施設 ひいの邱 》
形態:住宅型有料老人ホーム(デイサービスあり)
福岡市城南区樋井川4丁目9番15号
《 がん・難病緩和ケア専門施設 ながおの郷 》
形態:サービス付高齢者向け住宅(デイサービスあり)
福岡市城南区樋井川4丁目4番21号